
クイズ好きの人にぼくのクイズ体験談などを話すと、私も出てみたいと言う人が多い。あるいは、一度出た人が、他のクイズに出たいと言ってるのも耳にする。でも不思議にも、
「それでハガキは出したんですね」
と聞くと、答えは
「まぁだ」
さも熱っぽくクイズへ出たいとしゃべくる人の答えがこうなのだから、ぼくはがっくりくる。クイズに出たいのは、あくまで希望で、それを実現させる第一関門の応募ハガキを出してないなんて、有言不実行のお手本みたいなものだ。
「出てはみたいんですが、今の私の実力じゃ恥をかくだけなので、もう少し勉強してからハガキを出します」
なんて人は何年たっても勉強しやしないだろうし、ハガキも出さないんじゃないかな。あるいは、
「初心者はどんな番組から出たらいいのか。たくさんクイズ番組があるので……」
と考える人もいる。確かに番組によって、初心者向き、リピーター(クイズ出場2回以上の人)向きがある。でも実際に出られる出られないは別として、一枚でもいいからハガキを出してみたらどうだろうか。あれこれ悩んでいるより、思い切った行動の方がうまくいくことが多い。勝負ごとのひとつなのだからね、クイズは。
ともかく、出たい出たいという人みんなが一様に口をそろえて
「ハガキはまだ出してない」
というのにぼくは呆れてしまった。なかには
「学生生活ももうじきおしまいだから、二、三か月後に○○クイズに出て、ヨーロッパへ行って…」と、出場及び優勝旅行の計画も立てているのに、ハガキを出してない人もいたのだ。
こんな優柔不断な人が多かったので、この本のオマケに応募先を印刷したハガキをつけたかったほど。(そんなハガキはボツになるけどね)
さて、この一枚のハガキがクイズの始まり。
ハガキが拾われない限り、優勝はおろか、出場もおぼつかない。たった一枚でパリへ行った人、百枚出しても何の連絡もこない、いったいどんな人がTVに出ているのかといぶかしがっている人などさまざま。
すでに応募ハガキの段階から激烈なクイズ合戦は始まっているのだ。
一枚や二枚出しただけでは、激しい抽選で落ちてしまうと考えがちなのか、よく「何枚くらい出せばいいのか」
と質問を受ける。それには、
「何枚出せばよいかと考える前に、まず一枚出してください」
と答えたい。前述のとおり、いろいろ悩むわりには腰をあげる人が少ないのは残念だ。クイズは勝負なのだから、積極的に「やってやる」姿勢が大事。気力で押し勝つことも可能なのち、こんなことでグジュグジュ悩んでいてはどうにもならない。
TVでは「何千通ものハガキの山に、係では悲鳴をあげています」なんて言ってても、これは景気づけ。実際は数通しか来なくて、声も出ないでいることもあるらしい。なかなか当たらないとの先入観にとらわれず、まず出してみてください。
ぼくの場合、多くても1番組に10枚くらい。たった一枚でパリへ行ったこともある。世間一般で考えられるほど、バカみたいには出さない。それも気の向いた時にポストへ入れるだけ。
でも中には「何枚出しても一つも当たらない」と嘆く人や、予選海上で「80枚出してやっと当たった」と自慢気?に話す人もいる。これだけはクジの要素が強いから、運、不運が左右するのだろう。また単にたくさん出すだけでは気が済まず、親戚、知人を動員し、各所のポストから分散して出す人もいるらしいが、よく当たるポストってあるのかしら?
では、効率的なハガキの出し方を考えてみよう。それは、番組を見ていて、出場者募集の案内が出たら、二、三日置きに一通ずつ出す方法ではないだろうか。この案内は近く予選会がある証拠。予選会がないのに予選通知が来るわけないのだから、変な時期に出してイライラ待つことはない。
予選会は大都市では一〜三ヵ月おきくらいに、地方では年一、二回のところもある。大都市周辺の人はともかく、地方の人は、ヘタをすれば、出したのにまだ来ないと、次々に一年間出し続けるハメになる。
二、三日おきに一通ずつ出すわけは、一度にドサッと届いても、公平を期すためそのうちの一通だけを抽選用に残し、あとはボツにする方法をとっていることが多いため。バラバラに来ればいちいちチェックも出来ないだろうから、どれも有効にある。こうして五〜十通も出せば、経験的にまずどれか拾われる。
ちなみに79年8月に「グランプリ」と「Q&Q」に一通ずつ出したら、どちらも9月の予選会通知が来た。なお、出してから一ヵ月たっても音沙汰ない時は原則的にあきらめるべし。しかし半年後に突然通知が来たこともあり、嘆くにおよばない。何事も根気と努力である。
さて、最後に気をつけたいが、番組によっては、出場できる人の居住地域が限られているものがある。ネットワーク、予選会場、その他の都合で、地方または局から遠方の人は出られない番組もあるのだ。TVを見ていて、自分の地区からの人が出ていればOKだろうが、何回見て自分の済んでいる地区の人が出なければ、残念だが、出場できないと思ってください。不安な人は局に問い合わせてみるとよい。
ただし、出場可能地区(予選会開催地)に親戚、知人でもいれば、そこの住所で出す手もある。交通費がだいぶかかるが、その分クイズでがんばろう。
逆にローカル局制作の番組に「自前でいいから出して」というと、喜んで出場させてくれるかも。視聴者に「そんなに遠くの人も出てくれる番組なのか」と印象づけられるからだ。
また、番組によっては年齢制限のあるものも。おおむね18歳以上ならどの番組にも出場できるが、それ以下の人は中学生大会や高校生大会を狙おう。
▼主要都市ネットワーク一覧表 東京 日本テレビ 東京放送 フジテレビ テレビ朝日 (NTV) (TBS) (CX) (ANB) 大阪 読売テレビ 毎日放送 関西テレビ 朝日放送 (YTV) (MBS) (KTV) (ABC) 札幌 札幌テレビ 北海道放送 北海道文化放送 北海道テレビ (STV) (HBC) (UHB) (HTB) 仙台 宮城テレビ 東北放送 仙台放送 東日本放送 (MM34) (TBC) (OX) (KHB) 名古屋 中京テレビ 中部日本放送 東海テレビ 名古屋放送 (CTV) (CBC) (THK) (NBN) 岡山 西日本放送 山陽放送 テレビ岡山 瀬戸内海放送 (RNC) (RSK) (OHK) (KSB) 広島 広島テレビ 中国放送 テレビ新広島 広島ホームテレビ (HTV) (RCC) (TSS) (UHT) 福岡 福岡放送 RKB毎日放送 テレビ西日本 九州朝日放送 (FBS) (RKB) (TNC) (KBC)
肝心なのはハガキの書き方。原則的には官製ハガキに住所、氏名などの必要事項が書いてあればよい。連絡しやすいようにアパートなら棟・室番号まで、あるいは○○方まで詳しく書く。番組後との送り先と必要事項は「こんな番組あんな番組」(P19)に載せたので、そちらを読んでください。
官製ハガキでなく、封書やハガキ大に切った紙を小包でまとめて送ったり、ヘリにギザギザのある絵ハガキで送る人もいるらしいが、整理の都合もあるので、官製ハガキ以外では出さない方がよい。だいたいそんなもので応募すればボツにされるだろう。
ハガキの字はていねいにハッキリと。TVを見ながらあわてて書いたような踊った字や、一度に何十枚も書いたのか、書きなぐった字などは受けとる側としては読みづらいハズ。キチンと楷書で書かれたハガキの印象が良いのは誰でも同じだ。達筆を振るうことはないが、読みやすい字で書こう。
逆に、たくさん出すし読みやすいからと、ハンコを押したり、印刷する人もいると聞くが、印刷の年賀状より、手書きの年賀状のほうが有難いのと同じ理屈で、そのようなハガキはたとえ数が多くても、当選率は低い。第一かわいげがないのでボツになりそう。自分で手書きするべきだ。
ラジオのあるディレクターに、宛名に「御中(企業宛に送るときの敬称=個人宛の“様”に相当)」のついてないハガキはボツにする人がいる。ハガキの書き方にもルールがあるのだから、そのくらいは守りたい。心を込めて、誰にも読める字でハッキリと書こう。
なかには単なる抽選にすぎないとタカをくくっているのか、ただ出せばいいのだろうと、ずいぶんひどいハガキを出す人がいる。実はぼくは広告会社に勤めており、懸賞に応募してきたハガキを実際に抽選をすることがあり、その経験をお話ししよう。
TVクイズでなく、景品プレゼント(懸賞クイズ)で実際にあった話だが−−−、ある会社のカレンダープレゼントに結婚式の案内ハガキのあまった分に紙をはりつけ、案内文を隠して、その上に必要事項を書いて、50通ほど送った人がいた。−−−いくらなんでも非常識とハガキ整理のバイトが怒って、全部ボツにした。応募規定がどうこう言う前に、抽選するのは人の子なのである。
もう一つは実物を見ていただきたい。これは商品の空袋5枚を送ると、料理の本が抽選で当たるというプレミアムキャンペーンに送られてきたものだ。空袋を封書で5枚送るどころか、余った年賀状の文面に棒を引いて消しただけで「料理の本希望」などと一言も書かず、ポイとポストへ投げ入れただけ。どうです、いくら抽選だと言っても、こんなハガキを抽選用のタバに入れると思いますか。当然ですよね。「こっちはお客さまだ」とばかり、こんな応募ハガキを出すのだろうが、当たるわけがない。抽選では、単純にハガキのタバの中から必要枚数を拾い上げるのと思っている人が多いかもしれないが、そうではなく、今後の出場者の構成や、商品の販売計画を考慮して偏りが出ないよう、男女別、地区別などに仕分けしてから抽選するのが普通である。この仕分けの時点で人間の目でチェックされるのだ。TVクイズはもちろん、懸賞クイズでもキチンとしたハガキを出すように心掛けてください。
いくらていねいな字で書いても、最終的には多くのハガキの中からピックアップされるのだから、それなりに目立ったほうがいい。
多くのハガキ−−といっても、実際には何通くらいくるのだろうか。主催者側の発表で、月に数千通から二万通らしい。一方、出場できる人は番組によって一ヵ月に十数人から百人くらいだから、かなりの競争率だ。もっとも応募数は番組を大きく見せるために誇張しているきらいがないでもなく、「昔ほど来ないですね」と、あるスタッフはもらしていた。しかし、少なめにみてもかなりの競争率に違いない。
多くのハガキの中からいくら目立つためとはいえ、キャバレーの看板みたいにギンギラギンにするのは考えものだ。が、黒一色よりも、カラフルに色えんぴつやカラーサインペン、マーカーで書いた方が目立つのは当然だ。あまり塗りたくるのは趣味ワルだから、あっさりと、色を効果的に使ってみよう。イラストやカットを添えてあればなお目立つだろうし、束の中からふと取り上げたくなるだろう。
でも、やたらハデに目立つのはかえって逆効果。ある編集者にカラーマーカーを使う話をしたら、
「そんなものはボツにしますよ」
と言われてしまった。ハガキを選ぶ人がわざと目立とうとしているハガキに対して、サドにある気持ちはわかる。ぼくは「出場希望」とだけ赤で書いて、あとは黒のペンで書くことにしている。番組あてにくる多数の郵便物のうち、応募ハガキと一目でわかるようにとの配慮なので、サドにならないで。
クイズ番組は結局娯楽番組の一つなのだから、局としては、多くの視聴者に楽しく見ていただければいい。だから少しでも番組をおもしろくしようと努めている。こうしたらいい、ここがおもしろいといった、意見なり感想なりを添えてみてはどうだろう。局としてはうれしい励みになり、そんなに熱心に見てくれる人なのかと、当選させてくれるかも。意見が通って、ルールが変更になることもあるのだ。
司会者はいても、メインタレントは出場するあなたなのだから、あなた自身のPRも忘れてはならない。ユニークで楽しい人を望んでいるのだから、自分の性格や家族のこと、身の回りの出来事などを書くのもいい。
つまり、ハデさで目立つのではなく、他のハガキとどこか違った、ピカッと光るものを盛り込むのがコツだ。イラストでも短文でもいい。受けとったスタッフが、「これは」と思う何かがあれば、あなたのハガキの当選率はグンとアップするだろう。
以前、ぼくはハガキの余白に小咄を書いたことがある。ちょうど深夜放送のリクエストカードを書く気持ちで(リクエストカードも競争率が高く、なかなか放送で読まれないんだってね)。その時は毎週出していたので、いつの日か予選通知が来た。書かないよりはマシだったか。
それから本で知ったのだが、ハガキのまわりを赤くフチどりする方法。これは結構効果があったようなので、オマジナイと称して時々する。ダーマトグラフという濃い色エンピツ(シンが短くなれば紙をむいていく、エンピツ削りのいらないエンピツ)でヘリを塗る。この話も別の編集者にしたら、「ぼくはそんなハガキは意識的に外します」なんて、冷たいことを言われた。よくよく目立とう精神の強いハガキはムチでしばかれるとみえる。「アタック25」の河野プロデューサーも
「単に住所や名前があればよく、いろいろ書き加えたりする必要はまったくありません」
とおっしゃっていたし、「アタック25」や「アップダウンクイズ」の構成者の堤章三氏も、
「ごちゃごちゃ書いてあるからって、通すとか通さんとかいうことはまったくあらへん。ただ、ていねいな字で書いといてもらわんと、読めへんということではずすときもあるんで、そこだけ気ィつけてや」
とのお話だった。ぼくはムダなことをしていたのかなぁ。
確かに懸賞クイズに当たったハガキを見ても、ほとんどが住所や氏名だけだったから、それでいいのかもしれない。しかしそれゆえに手を加えたハガキが食指をそそるのは否めない。ま、なにぶん抽選だから運が大きく左右する。皆さんも研究してください。
なお、赤でフチどりするのはご自由だが、このとき必ず通信面(ハガキの裏面)かヘリまでにすること。表まで赤がはみ出して速達扱いとなり、料金不足で送り返されたという笑い話みたいな実話があったので気をつけてください(ぼくじゃないよ)。
クイズ出場はハガキの抽選が第一関門で、そのあともいろいろ関門があるけれど、抽選だけで当落がきまるのが懸賞クイズ。かつて、懸賞クイズファンのための雑誌もあり、読者欄の戦果報告や落選報告を読むと、単なるハガキの抽選だけとはいえ、並々ならぬ努力がいるものと感心させられた。
懸賞クイズは広告戦略の一方法で、プレミアム・キャンペーンの一種。公正取引委員会は、プレミアムを「直接的であるか間接的であるかを問わず、くじの方法によるかどうかを問わず、事業者が事故の供給する商品又は役務の取引に付随して、相手方に提供する物品、金銭、その他の経済上の利益(景品表示法第2条)」と定義している。はやい話がオマケだ。オマケを刺激にして消費者の需要を喚起し、自社名や自社商品の訴求およびシェアアップをはかるために、あるいは商品を卸売業者、小売業者、消費者の間に、円満かつ、できるだけ速く流通させる戦術として行なわれているのである。決して、企業が消費者に施しをしているのではない。
▼78年度プレミアムキャンペーン応募数ベスト10(雑誌「宣伝会議」より)
順 キャンペーン名 対象商品名 企業名 応募数 方 法 1 三菱カープラザクイズ ミラージュ 三菱自動車 3,260,000通 オープン 2 ロマンの旅プレゼント カルピス全商品 カルピス食品 2,460,000通 オープン 3 コダカラー,クーラーバッグプレゼント コダカラー 長瀬産業 2,368,426通 クローズド 4 富貴50万円クイズ 清酒富貴 合同酒精 2,310,000通 オープン 5 78T・W人気コンテスト テクノス・ウォルサム 平和堂貿易 2,216,440通 オープン 6 やまもと寛斎Tシャツプレゼント 三つ矢ブランド朝日麦酒 2,143,529通 クローズド 7 マリーナぴちぴちクイズ マリーナ 味の素 2,067,988通 オープン 8 家計費まるまる半年 シーグルメ 日本水産 2,050,000通 オープン 9 トライアルヨーロッパクイズ スターレット トヨタ自動車 1,700,000通 オープン 10 浮いた浮いたの プレゼント 焼そばUFO 日清食品 1,540,000通 クローズド
石油ショック以来、プレミアム・キャンペーンは減っていたのだが、再び過熱しはじめ、78年度は、オープン懸賞(誰でも応募可能なもの。これに対し商品を買わなくては応募できないなど制限があるものはクローズド懸賞と言う)のプレミアムキャンペーンは186件と前年を上回った。その商品も海外旅行や車など総額二千万から1億円と豪華なものが目立ち、反面“クイズ”の内容は「会社名」「商品名」を当てるものばかり。公取委は景品表示法で景品総額や1景品当たりの最高金額を制限しているものの、オープン懸賞では最高たったの百万円以内としているだけで、企業はキャンペーン効果が高いことからも、オープン懸賞に走りがちだった。
こうしたことから公取委は「過熱気味のオープン懸賞は、いたずらに応募者の射倖心を煽り、結果的に不当顧客誘引行為にあたる疑いがあり、応募、抽選方法を含め実態を調査し、改善策を検討する」ことになった。そして79年12月、手始めにビール業界に賞品額のワクが設けられた。
今後の動きがどうなるかはさておき、所詮、懸賞クイズは企業の増収策なのだし、丸の中に文字を入れるだけの、あまりの簡単さでは、景品だけが興味の対象で、問題を解く楽しみがまったくない。だから、ぼくは魅力を感じない。
しかし、ぼくでも本気になって懸賞クイズに応募したことがある。それはギリシャ政府観光局の「ギリシャ遊学選考試験」(78年夏実施・広告代理店は博報堂)だ。理由は、
1、クイズが50問もあり、三択といえども難しいものが多く、やりがいもある。
2、8泊9日のギリシャ旅行招待が全問正解者の中より50名と多い。
3、告知媒体がぼくの知るかぎり集英社の雑誌のみと、露出量が少ない。
よって、たくさんハガキを出せば「あわよくばギリシャ!」と出した、出した。50問の答えを百科事典、理科年表、旅行ガイドブック、地図帳など総動員して大調査。ある日の朝日新聞のコラムに「最近、気象庁にギリシャの降雨量は東京の何分の一かといった、若い女性からの同じ質問が相次いだ。不思議に思った職員が調べてみるとこれが『ギリシャ遊学選考試験』……」なんていう記事がでたくらいだ(難しいクイズがでると百科事典を出版している平凡社の電話がパンクするとか)
50もの答えをハガキにビッシリ書くのはたいへんだったが、正解かどうかチェックするのはもっとたいへんだったろう(間違いやすい問題をいくつか抽出してチェックし、あとは目を通さない方法や、チェックしないで抽選してしまい、その後で正誤を確かめ、誤っている分についてのみ再抽選する方法もある)。
ぼくはこのハガキを一日一通ずつ、規則正しく50枚出した。三日坊主のぼくにしてはよくやった。ついでにガールフレンドに答えを全部教えてやって、あわよくば二人で……、なんて考えていたのだ。彼女の方は百通も出したのだが、ぼくと行く気はなかったようである。
「公開抽選会を朝日講堂で行ないますので、ぜひおいでください」との案内が来たが、忙しくてぼくらは行けなかった。抽選会も終わったある日、彼女から興奮した電話。
「ねぇ、あたし当たったのよ。ギリシャ!今日手紙が来たの。北川さんにも来たでしょ。応募者全員にって書いてあるわよ」
「えーっ、オレんとこ、何も来てないよ。ホントかよ、郵便遅れてんのかなぁ……」
ところが、待てど暮らせど、ぼくに通知は来なかった。つまり「応募者代表を前にした公開抽選で合格者を選んだ……」と合格通知状にあるのを、彼女は興奮のあまり「応募者みんな合格」と読み違えていたのである。
応募総数12万9千通、うち全問正解6万余通。百通出した彼女は当選、答えを調べて50通出したぼくは落選。ボーゼンであった。しかし四百通出しても落ちた人がいたし、他人がかわりに出してくれたその一通で合格した人もいたとか。げに恐ろしやハガキの抽選。合格者は平均20〜30通出したとの話。
ギリシャの旅はオプショナルツアー以外は全部スポンサー持ち。とてもよかったんだって。彼女はおみやげをたくさん買ってきてくれた。
この懸賞クイズ、79年はクロスワード式の簡単なもので実施された。「今度こそ!」と百通出したがダメだった。
「ギリシャ遊学選考試験」は当然ギリシャへの観光客誘致が目的である。ギリシャは世界史に必ず出てくる、日本人にはおなじみの国だが、それに反して日本人観光客は少なかった。このような場合若い女性を狙うと成功しやすい。彼女たちは比較的時間も金もあるし、ミエっ張りだし、おしゃべりだ。喫茶店なんかで、「ネェ、あたしギリシャへ行ってきちゃった。よかったわよー(アンタはまだでしょ)。エピダウロスなんてさー、ただの石なんだけどそれが違うのよねー。で、さぁ、一緒になったグループにケン君って子がいたのよォ。その子がネェ……」と、クチコミ効果も満点。このオハナシのように、若い女性を狙えば男は付いていき、結果として観光客数は増えるのダ。
一方、どうして50問もの難しいクイズにしたのだろうか。それは、歴史や風俗を知ってから行ってみるとおもしろいし、難しいクイズなら答えを調べるために、パンフレットやガイドブックを読む。すると応募しなくてもおもしろさが広がりギリシャをより知ってもらえる……行く気を起こさせることができるのである。ぼくもあれこれ調べたから、その点からも成功したキャンペーンといえよう。折からのエーゲ海ブームもあり、ギリシャへの日本人観光客はドッと増えた。
それにしてもギリシャ−−−行きたいなぁ。
どうやって抽選するのか
ギリシャ遊学のように公開抽選したり、そうでなくても警官立会いのもとで厳正に……が、多い。
抽選方法は、全国から来たハガキの山から目隠しするなどして無作為に取り出すのだろうが、こんな方法も考えられる。
その1 無作為に取り上げられたハガキに同一の人のものがあれば、それは外してもう一度別のハガキを選ぶ。同じ人に同じ景品をあげても意味がないからだ。この場合「同じ人」を「同じ家族」にまで広げることもある。夫や子の名前で出しても、住所や筆跡で判断できる。多くの人に景品をあげられる、公平な方法だ。
その2 応募ハガキを地区別に分けて、当選者数を地区ごとに比例配分して、地区別に抽選する。すると全国まんべんなく、理論的に公平に当選者を出せる。逆に特定地域でより売上げを延ばしたいのなら、そこだけ当選数の割当てを増やして、煽ることもできる。
その3 一人で何通も応募する人と、一通しか出さない人とのギャップを埋めるため、抽選のタバには一人一通しか入れない。しかしチェックがたいへんだし、たくさん出してくれる人はそれなりのお得意さんでムゲにもできないから難しいだろうが。
応募するうえでの注意事項
その1 まず応募券や商品の空袋などが必要な場合は必ず送ること。これらは真先にチェックされ、いくら「いつも使っております。たいへん便利です」なんてお世辞を書き添えても、肝心なものがないのだから全部ボツ。他のメーカーの空袋を送るのは論外(実際にある)。
その2 オープンの場合はクイズ形式が多い。必ず正解を書くこと。間違ったものや、何も書いてないものは当然アウト。
その3 住所、氏名などはていねいな字で詳しくはっきりと書くこと。ハガキが拾い上げられてもミミズが悶えている字だと、宛名が書けず発送できないために、その場でボツ。あるいは抽選が終わって宛名を書く段階で、他のハガキと交換。さらに住所が○○市××町までで、番地や棟番号を書いてないハガキもボツにする。過去の経験から、宛名不完全で返送されることが多いからだ。用意した景品や送料がもったいないものね。
その4 「年令」「家族構成」「お買上げ店名」など、ちょっとしたアンケートがある時はちゃんと書く。書いてあるのとないのとではスポンサーの心証が違う。なぜってスポンサーが懸賞クイズをするのは、そのようなデータを得たいのがホンネであって、景品をあげるためではないのだから。
その5 封書や応募用ハガキで送る場合、料金受取人払いでない限り、キチンと切手を貼る。特に封書の料金不足に注意。切手のないものは不足分を郵便局に払ってポイ。あるいは「未納還付」という処置で返送される。また「官製ハガキで」「封書で」などと郵便方法を指示してある場合はそれを守る。守られてない郵便物が混じると抽選作業が煩雑になるのでボツにすることがある。
その6 切手をちゃんと貼って、応募券もキチンと貼ったけれど、自分の住所・氏名などが書いてなければボツにせざるを得ない。ポストへ入れる前にお祈りと確認をお忘れなく。
どれも当たり前のことなのだが、実物をご覧の通り最低のルールすら守られてないものが少なくない!(実際に自分の住所・氏名が書かれてないハガキの実物掲載)
それはさておき、皆さんの中には「ああいった抽選は本当に賞品を発送しているのだろうか。特に“発表は賞品の発送をもってかえさせていただきます”なんてのは実際に送らなくてもわからないではないか」などとお思いの方が多数いらっしゃるのではないでしょうか。企業イメージにかかわることだから、よほどの場合でもない限り、キチンと発送されている。しかし何度出しても当たらないことからそのように疑う人もいるようだ。そんな人からメーカーに宛てられたお礼状を一つ紹介しておこう。
では、皆さんに幸多からんことを。どんなハガキが拾われやすいか、正直なところぼくにはわからない。ここに書いたことがキチンと守られているのなら、あとは運でしょう。
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