2■話題篇
クイズマニアだから書けた!
クイズの世界が拡がる、
ウラから見たお話





クイズ番組の出場手順

 クイズ番組は「わたし出た〜い」という人をいきなりハイハイとは出してはくれません。出場までには、いくつか乗り越えなければならないヤマがあり、そのすべてにクリアし、しかも優勝するとなると、かなり至難のワザです。
 番組を見ていると「予選会のお知らせ」や「出場希望の方はこちらまでおハガキを」というテロップが流れることがよくありますが、まずハガキで出場希望者を募ります。そうすると全国からハガキがやってきます。でもハガキだけではどんな人か、どんな顔か、どんな頭か、テレビに出していい人かなどなどまったくわかりませんので、ハガキを適当に抽選して、選別された人を対象に予選をします。予選は番組によって違いますが、一番簡単なのは身上調査表である、通称プロフィール表に記入してもらうだけの時もあります。たいていはクイズを出題して成績上位の人に残ってもらい、面接をして人を見て選びます。また、ヤマカンクイズなどでは面接だけする場合もあります。
 こうして予選に通ると出場になりますが、予選に通ってもいろいろな事情から必ずしも出場できるとは限らない番組もありますので(大阪系の番組に多い)、ヌカ喜びは禁物です。
 予選に通ってしばらくすると、いついつ出場してくださいという出場通知がきます。うれしいやら緊張するやら複雑な気持ちですが、とにかく放送局へ行きます。ほとんどの番組は録画ですから、自分の出た番組は家庭で見ることができます。簡単にリハーサルをして本番になります。録画進行はテレビで見ているよりはるかに速いペースで進んでいきます。あっという間に最後の1問となるでしょう。
 録画終了後、成績に応じて賞金や賞品、あるいは記念品が渡されます。10万円以上の高額賞金は後日小切手郵送や銀行振込になる場合もあります。大きな賞品は後日配達してくれますので、唐草模様の風呂敷を持っていく必要はありません。
 もし海外旅行を獲得したのなら、録画終了後すぐ旅行へ行かなくてはならないのか、というとそうではありません。後日優勝者だけでツアーを組む場合と、半年から1年くらいの間の好きな時期に、一般のパックツアーに参加して行く場合とがあります。優勝者ツアーならクイズの趣味が一致した人たちとの楽しい旅になるでしょうし、パックツアーなら自分の都合のいい時に行けるので、どちらにもメリットはあります。
 もし勝てなかったら−−−、それで普通です。たいていの番組は優勝さえしなければ、何年かのちに再び出場させてくれますので、もう一度チャレンジしましょう。
 そうです。人生の喜びは挑戦することにあります。高い山ほど登りがいがあるでしょう。きっと頂上は眺めがいいですよ。

取りすぎたら返す、賞金の悲劇

 クイズといえば賞金・賞品がまず頭に浮かびますね。ぼくはクイズの魅力は賞金や賞品でなく、クイズに答える爽快感だと固く信じて疑わないのですが、世間一般では、まだまだ賞金や賞品のためにクイズをするものだと思われている方が少なくないようです。もっとも、クイズに答える爽快感は、クイズをやっている人たちしかわからないものなのかもしれません。お茶の間で見ている視聴者の皆さんは、どうしても賞金や賞品に目がいってしまうのはいたしかたないことでしょう。賞金・賞品を出すこと自体は、優勝者には賞品を、という考えが遠くギリシャ時代からのならわしでしたから、なんの不思議もありません。
 ところで、賞金や賞品には上限があるのですよ。合わせて100万円まで、つまり、賞金が60万円なら、同時に貰える賞品は現金に換算して40万円相当のものまで、という規定があるのです。しかも一時所得として税金を10%天引きして手渡されるのが普通ですから、実質の手取り額はテレビで謳っているものより少ないのです(但し、確定申告をすれば税金が還付される場合が多い) 。かつては上限などなく、クイズ番組の賞金額はどんどんエスカレート。しまいには3000万円相当のマンションが賞品なんて番組も登場して(今の物価なら一億円位の価値!)、射倖心を煽るばかりだと、その筋が規制してしまいました。
 例えばクイズ・ミスターロンリーや百万円・クイズハンターのように、クイズに答えるたびに賞品が手に入る番組がありますね。どんどん勝ち進み海外旅行まで獲得したら、それらの現金換算額は当然100万円を越えてしまいます。そんな場合はどうするか。なんとシッカリ、越えた分に相当する賞品なり賞金なりをお返ししてしまうのです。テレビ画面で山のような賞品と、分厚い賞金の袋を抱えてニコニコしている優勝者は、VTRが止まり、照明が暗くなって「お疲れさまー」となったら、「おめでとうございました。どの品を置いていきますか」とスタッフから言われてしまうのですよ。しかも換算額は市価の上代。内容が15万円くらいのハワイ旅行でも20万円相当と言う番組もあり、その分余計に品物を返してしまい、あとで文句を言った優勝者もいるくらいです。
 でも、テレビを見ている限りでは賞金・賞品は豪華。そこで新聞の投書欄に、「報酬とは労働力の比重によって支給されるもの。TVクイズの賞金は世の中の正常な行動を破壊し、助成していくものだ。賃金や給料とは違ってこれだけは別格で、現実離れしている。雑学、断片的な知識で、ある人は何百万円も稼ぎサラリーマンの年間所得を上回るとは、正常な社会とは思えない。スポンサーの姿勢にも疑念がでる。正当な代価ではないからだ。(朝日新聞より)」といった投書が毎年のように載るのです。こういう投書を寄せる人はご老人に多いですが、こんな人ってクイズ番組を見るたびに憤慨しているのでしょうね。かわいそう。

同じハワイ旅行でも……

 82年3月、友人の小室周也君と杉山眞君の義兄弟はクイズ・100人に聞きましたに優勝し、ハワイへ行きました。この時一緒に出た森田敬和君は、ドジをふんでパスポートを落としてしまい、成田空港への送り迎え役になってしまいました。さらに道蔦岳史君もアップダウンクイズで優勝し、日程を合わせてハワイに行きました。そこでクイズに出ていないぼくは、自腹を斬ってハワイへついて行きました。だれが一番偉いでしょう……。
 なんてヘンなクイズをしているヒマはありませんので本題へいくと、4人でタナカ・オブ・トーキョーという和風ステーキレストランへ夕食をとりに行ったのです。小室・杉山・道蔦は「クイズ様」のおかげで食事券を持っており、タダ。自費のぼくはメニューをしげしげながめ、一番割安な定食をオーダーしました。ところが出てきた肉はぼくと道蔦は同じ15ドルのもの。小室君たちのは1クラス上の20ドルの肉でした。つまりです、クイズ・100人に聞きましたのハワイ旅行の食事のほうが、クイズ20年の歴史を誇るアップダウンクイズのより、いいものだったのです。
 クイズ・100人に聞きましたは日本交通公社のルックで行くツアーで、ホテルの部屋には番組スタッフからの贈り物であるフルーツバスケットが届く念の入れよう。一方、アップダウンクイズはジャルパックで行くツアーで、ホノルルのあるオアフ島のほかに、マウイ・カウアイのいずれか一島も巡れるワイド版。同じ優勝ハワイ旅行でもクイズ番組によって内容は様々ですから、「またハワイかー」とがっかりしないように。
 さて、クイズ・100人に聞きましたもアップダウンクイズも、充実したハワイツアーを提供してくれるいい番組ですが、中にはかなりセコイ番組もあります。最低価格の予算しかないのでしょう、海外旅行がもっとも安くなる6月か9月にしか行けない、日時指定の番組も。あるいは社長一人でやっているような、小さな旅行会社と提携しているUHFのクイズ番組もあり、旅行に行こうと電話をしてもいつも社長は留守。事務所に居れば電話はお話中ばかり。いつになったら航空券が貰えるのか、キャッチホンにしろ、とイライラした優勝者もおりました。
 世の中なんでも、ピンからキリまでです。

ハワイで見よう、
クイズ・100人に聞きました

 前項のとおり、クイズ・100人に聞きましたのハワイツアーにくっついていったわけですが、ハワイのテレビでもクイズ・100人に聞きましたをやっていました。舞台中央には大きなボードがあり、左右に5人ずつの2家族が並び、司会者が鷹揚に動きまわる……。
 おっと、TBSのクイズ・100人に聞きましたがアメリカまで進出したのではありません。アメリカの番組をそっくりマネたのが日本のクイズ・100人に聞きましたなのです。
 アメリカでは「ファミリー・フュード(Family feud)=2家族の争い」というタイトルで放送されているこの番組は、その名のとおり5人の家族が2組登場。「主婦100人に聞きました。窓から出すものとは」「サラリーマン100人に聞きました。社名に“ゼネラル”と付く会社は」といった問題が出題されます。得点の数え方も日本と同じで、唯一違うのは中央のボードにイラストがなく、文字だけのところでしょうか。もちろん英語ですが、クイズに興味があれば気合で答えもわかります。
 あるいは、83年3月まで放送していた「スーパーダイスQ(TBS)」は、やはりアメリカのクイズ番組「チック・タック・ドゥー」をマネしたものでしたし、日本のクイズ番組、ひいては日本のバラエティ番組のほとんどがアメリカの番組をマネしたものといって過言ではないでしょう。国内を見回しても、クイズ面白ゼミナールや、なるほど!ザ・ワールドのそっくり番組が軒並み登場しましたね。日本は模倣文化の国なのです。
 そのなかで特筆したいのはウルトラクイズで、逆にこの番組をマネしてアメリカのNBCがそっくりの番組を作ったそうです。こちらのは世界一周しながらクイズをしたとかで、優勝賞金総額も2000万円と本家よりも豪華版。日本テレビは放映権を持っていると聞いていたので放送を楽しみにしていたのですが、いまだに放送されないところから考えると、本家ウルトラクイズが「史上最大」でなくなるのを避けたためでしょうか。

タバコは吸わないクイズマニア

 「クイズマニア」はネクラな印象がしますが、それは一昔前のこと。最近ではクイズ番組自身がバラエティ化して、クイズそのもののイメージが明るくなってきたのと、テレビが極めて身近になり、テレビに出るのが特殊なことではなくなってきたことなどから、クイズマニアのイメージもだいぶ変わってきました。しかし何かしらの共通点はあるようです。
 そこでぼくの周りのクイズマニアの生態を観察すると、まず凝り性であること。何かに熱中する性格の者が多いようです。クイズについてはもちろんですが、それ以外のことでも一生懸命に凝っている人がいて、例えばぼくは旅行も趣味ですが、日本中の国鉄路線に乗ってしまっています。国鉄完乗しているクイズマニアはほかにもいて、クイズと旅行はネクラな趣味という点で一致しているのかな。あるいはなんと世界80ヵ国を巡っている人や、女の子に惚れたらどこまでも追い掛ける者など、とにかくとことんまでやらないと気が済まない性格の人が多いようです。好奇心が強いからこそ、物事にジックリと取り組んでみたいのかもしれません。
 次にタバコを吸う人が少ないのは喜ばしい傾向です。今日本の喫煙率は約70%とのことですが、クイズの仲間ではまず吸う者がいません。だからライターを賞品に貰おうものなら、即座に誰かにあげてしまうから、どんなに高いライターでも無価値です。アメリカではタバコを吸わないのがエリートの条件らしいですが、クイズマニアはこの点一歩リードしています。
 逆に酒は個人差があって、ぼくはビール1杯で赤くなるたちですが、毎日ビールを欠かさず飲まなくては死んでしまうような人もいてさまざま。クイズマニアで宴会をすると、酒瓶はほどほどに出ますが吸殻はほとんど出ないのです。
 それから、時間の自由になる自営業の人がどちらかと言えば多いので、珍しい職業の人がいっぱいいらっしゃいます。たとえば刀の鞘を作る鞘師、ガリ版を切る筆耕、菓子折の箱を作る紙器業、ぞうりの製造卸、卓球のラケット製造、アスレチックジムのオーナーなどなど、世の中にはいろんな仕事があるものだとクイズをやって始めて知りました。勿論有閑マダムや、何をしているのかわからない学生くずれもいますが。

スーパークイズマニア大集合

 クイズを始めた頃、ぼくにとってクイズマニアの方々は憧れのスターでした。難しい問題に次々に答え、どの番組にも優勝。ぼくもこうなりたい、一度あの人に逢ってクイズ必勝のコツを聞きたいと、いつも思っていました。
 でも、いざ逢ってみると要するに普通の人なのですが、みんなどこかユニーク。不思議な才能の持ち主ばかりです。
 板橋区の大木一美さんはクイズ界の影の人事部長ともいうべき人で、クイズマニアの人脈に通じ、誰がどの番組で勝った、今度AとBが対戦するが、まずAの勝ちだなどと、実に人事をつかんでいました。過去のクイズ番組のビデオを多数持っており、自宅に若い連中が自然と集まるので、クイズ塾みたいな感じでした。紹介が過去形なのは、彼はいろいろ考えるところがあり、パタッとクイズから足を洗ってしまったからです。でもクイズのビデオはいまだに録っているようです。
 松本市の水津康夫さんはたいへん博学な人で、普通のクイズマニアは、ともすれば表面的な事象だけにこだわってしまいがちなのに、水津さんは物事の奥まで実によくご存じの方です。知識量ではおそらく日本一のクイズマニアではないでしょうか。
 横浜市の道蔦岳史君は今一番有名なクイズマニアです。クイズをやっている印象がどこか初期のぼくに似ていたのですが、会ってから話を聞くと、彼も知らない人から「北川さん!」と声を掛けられたことがあるとか。互いに迷惑な話です。彼の強いのは日本一戦などの大きな戦いにすべて勝っているところ。そういう人は過去にも、まず、いません。でも自分について書かれた週刊誌の記事を読んで、「(事実関係が違うから)オレのイメージが狂う」とすっかりタレント並の発言をしました。あれほどホンネとタテマエの違う男も珍しいと、仲間内ではささやかれています。
 港区の森田敬和君はひょうきんな人柄から付き合いが広く、よってクイズ界のさまざまな情報に通じています。一時は頭の中にクイズしかなく、寝ても覚めてもクイズの人でした。一度負けた番組でも、どういうわけか敗者復活戦に呼ばれてポロッと勝ってしまう強運の持ち主で、クルマを潰すほどの交通事故を起こしても無傷というラッキーボーイ。
 練馬区の森田俊明さんはテレビではクライ雰囲気ですが、明るいとか暗いとかで判断できないユニークなお人柄の方です。漢字や古いいいまわしについては学者並の人ですが、旅行がキライで、せっかく優勝してもどこにも行きません。パネルクイズアタック25の400回記念大会でグランドチャンピオンになりましたが、フィルムクイズのベルサイユ宮殿が答えられないで「すみません、旅行に行かないもんで、わかりません」と言い訳しました。

あるクイズマニアの死

 クイズマニアで、その死がマスコミで報道された方が、ぼくの知っている限り唯お一人いらっしゃいます。その方、鳥居治光さんは、神奈川県葉山町でご住職をされている方でした。
 お坊さんといってもまだ若く30を過ぎたくらい。彼のデビューは79年の第2回アメリカ横断ウルトラクイズで、成田のジャンケンで破れた際、当時の人気映画「八甲田山」の名セリフをもじって「ホトケは我を見放した」と、ジュズを握って天を仰いだので一躍有名になりました。奥様はなんと国際線のスチュワーデスをされていた方で、「(最初に訪れる)サイパンには電気がないからマッチがいる」とジョークを言われたとかで、鳥居さんはそれを信じて台所の徳用マッチをカバンに入れていたそうです。
 その後たいへん明るいキャラクターと、その職業のため珍重され、ぴったしカンカンやベルトクイズQ&Qなどの、クイズマニアではなかなか出れないキャラクター重視の番組に次々と登場。三枝の国盗りゲームのお坊さん大会にも出場しました。そのかたわらで、スタッフとしてクイズ番組の問題作りも始めていました。
 ぼくがお会いしたのは三枝のホントにホントの問題作りをしているときで、制作プロダクションにポツンと座っている、どこかで見たことのある人だなー、と思ったその人が鳥居さんでした。問題会議が終わってから喫茶店で、
「北川君、クイズに出るならもっとスタッフ受けするようにしなきゃ」
と、説教?をしてくれました。
 彼はまた、ウィンドサーフィンやハングライダーなどもする、極めて趣味の広い「生臭坊主」でしたが、これが命取りになったのです。82年の風の強い9月の夜、行方不明になったサーファーのニュースに彼の名がありました。
 僧侶で、サーファーで、クイズマニアでクイズ作家でもあった鳥居さんは、特異なキャラクターでクイズマニアの人気者になり、そして特異な去りかたをしていったのです。
 思い出を込めて、合掌。

クイズから生まれた有名人

 テレビの力は大変なもの。視聴者参加のクイズ番組でも、何回か出ていると世間様に顔を覚えられてしまい、このぼくでさえ、知らない人から声をかけられるのもしばしばです。だからクイズが縁で有名人になってしまう人がいても不思議ではありません。
 例えば女優の宮崎美子さんは週刊誌の表紙の女子大生シリーズに出てから有名になりましたが、それ以前、78年9月24日のアップダウンクイズ15周年記念全国大会中・南九州沖縄地区大会に熊本大学のフツーの学生として出場したことがあります。この時の成績は5問とふるいませんでしたが、のち、女優となってからの83年8月14日、今度はアップダウンクイズ20周年記念全国大会近畿地区大会のシルエットゲストとして出場しました。クイズマニアの中には将来偉くなってシルエットゲストに出たいという者がいるくらいです。
 また、囲碁棋士の小山鎮男さんは、70年代に最も活躍した知る人ぞ知るクイズの強豪。氏はテレビ慣れしていたためかNHK囲碁講座の講師になり、素人さんは出れない「連想ゲーム」にも出演しました。
 それから、85年1月に、アップダウンクイズで3週勝ち抜きをした中央大学理工学部の石野まゆみさんは、ハキハキした活発な答えぶりがNHKの目にとまり、科学万博のレポーター役で毎週テレビに出るようになってしまいました。さらに、就職浪人の道蔦岳史君は、クイズのボードゲーム「パタック」のデモンストレーターとして、晴海のおもちゃショーに出演。「クイズ荒らしナンバーワン」という肩書の名刺を配り、人寄せパンダだと言う周囲の声を意に介せず、本人自ら「日本初のプロクイズ荒らし」と称して活躍?しています。
 学生クイズマニアのなかには、クイズに出てテレビ局に入りたくなり、テレビ局に就職してしまった者もいます。例えば、日本テレビのアナウンサー増田隆生さんは、関東地区の方ならローカルニュースなどでご覧になったことがあるでしょうが、彼はかつてのクイズマニア。日本テレビ入社目前の82年1月にも、パネルクイズアタック25に出てハキハキと答え、アナウンサーの素質を見せています。この時はトップになったもののフィルムクイズができず、優勝を逃しました。また、フジテレビの深夜番組オールナイトフジで、女子大生にいじめられいつのまにか姿を消した森ディレクターは、中央大学クイズ研究会の会長だった森英昭さんその人。
 ウルトラクイズは出場者の印象が強いため、有名人になった人が数多くいます。第8回ウルトラクイズで活躍した通称「百合もなか」こと奈良哲弥さんはその体験を買われ、地元の成人式で講演をしたそうです。さらに準優勝したS君は、同番組を見たある映画監督にみそめられ、テレビ映画の主役になってほしいとの打診がありました。その映画はなんと「金属バット殺人事件」。残念ながら、S君は断ったそうですが。

名Q会と三冠王

 プロ野球選手の集まりに「名球会(めいきゅうかい)」があります。投手なら200勝、打者なら2000本安打という成績をおさめた選手でなければ入れない、いわばプロ野球界のエリート集団です。そこでそれをもじって球をクイズの頭文字であるQに換え、「名Q会(めいきゅうかい)」を作ることになりました。
 名Q会に入れる条件は、クイズ番組に5勝以上することです。これだけ勝っている人はそういませんので、クイズ界のエリートといっていいでしょう。野球界と較べずいぶん数が少ないですが、出場できるチャンスがプロ野球とは比較にならないほど少ないので妥当でしょう。但し、5勝といっても2人もしくはそれ以上で出場する番組は、優勝ポイントを人数割りしなくてはならず、例えば2人一組で出るクイズダービーで十万点を獲得しても、その優勝ポイントは半分の0.5でしかありません。また、5人で出るクイズ・100人に聞きましたなら優勝ポイントは5分の1の0.2となります。
 一方、クイズ三冠王とはアップダウンクイズ、クイズタイムショック、パネルクイズアタック25の、10年以上続いている、クイズ番組中のクイズ番組の3つすべてに優勝した人のことをいいます。以前はこれにクイズグランプリを加え、4つ優勝のグランドスラムという言い方もありましたが、クイズグランプリはすでに終了しましたので、今でははずしています。内容や歴史がこれらに匹敵するクイズ番組が現れたら、将来はこれらを加えることもありうるでしょう。現在名Q会に入れる人は約30名、三冠王は約10名程度です。
 さて、三冠王はともかく、名Q会は会と銘打った以上会合をしなければならないのですが、元々冗談話なので、そんな話は一切ありませんでした。しかし名Q会の話を聞きつけた週刊誌のバックアップで85年4月、ようやく初会合が都内で催されたのです。
 ところで、「裏名Q会」が密かに結成されたという噂もあります。こちらはクイズ番組に何度出ても優勝できない人の集まりだそうです。こっちの方が勢力がありそうですな。

血液型クイズ学

 血液型によって性格や相性、適性などがある程度決められると、ひところ血液型が大ブームになりました。テレビ番組にも血液型をテーマにしたクイズ形式のものがあります。ABOBAゲーム(テレビ朝日)、知って得するゼミナール(テレビ東京)などです。一方では相性診断などは統計学的にいっても全く現実性がなくウソである、と反対意見を述べる人も出てきて、まだまだ血液型性格診断は過熱しています。
 ところで先日クイズ好きの友人10数名で会合したとき、それぞれの血液型の話になりました。誰もさまざまなクイズ番組で優秀な成績を修めているクイズマニアばかりですが、その半数以上がB型だったのには驚きでした。
 いうまでもなく日本人に一番多い血液型はA型で、全体の約40%。B型は約20%です。単純に考えると約半数はA型のはずなのに、クイズマニアにB型が多いとなると、血液型による性格が影響しているのかもしれません。
 血液型の本によるとB型は、「とっさの場合の判断力・行動力に富む。興味が多方面で、しかも集中する。考えが型にはまらず楽観的で、周囲にとらわれない……」とのこと。そういわれればクイズにぴったりの性格ですね。この性格診断をクイズに当てはめるのなら、
「瞬時に正解を頭の中から引き出し、あれもこれもとさまざまなものに興味を示し、文学から科学までなんでも答え、しかもできなくてもともと、周りの人がなんと言おうと関係ない……」となりますか。
 一方「いきあたりばったり」の性格でもあるとされ、これまた一攫千金のクイズに当てはまるかもしれません。そういえば、サラ金でコゲツキを起こす人の多くはB型だそうで、クイズマニアにも業者に追われ、姿をくらませてしまった人がいました。
 ま、血液型で性格がどうのこうのというのは、しょせんは遊びなのでしょうが、こうして身近に当てはめてみると、まんざらともいえなくないようです。
 では、血液型のクイズを……。
「巨人軍の王監督、作家の永六輔氏の血液型はそれぞれ何型でしょう」
 答え、名前のとおりです。

タレントは答えを知っているか

 視聴者参加のクイズ番組でも、4月10月の番組改変期には特集としてタレント大会が行われ、番組にリズムを持たせています。でもクイズマニアとすれば、彼等が出ているとその分自分たちが出れなくなるのですから「いつもテレビに出れるタレントよりも、出場チャンスの少ないわれわれに開放して欲しい」という人もいます。わからないでもないですが、テレビ番組はあくまで見る人のために作られているのですから、いたしかたないでしょう。
 あるベテランクイズ作家は、なぜときどきタレント大会をするのかという質問に対し、
「例えばいつものなじみの和菓子屋があるとします。その店はどれもおいしくてお客さんもついているのだが、なじみ客でもたまには違った菓子が食べたくなるでしょう。そこでいつもとは違った菓子を店に出してみる。それを食べたなじみ客はこういう変わった菓子も置いているのか、また来ようと言ってくれるだろう。あるいはいつもは通り過ぎる客も、アレッ!ちょっと変わった菓子があるぞと、これも買ってくれるかもしれない。タレント大会はこういうものと思ってくださいな」
 と答えてくれました。マンネリの防止策の意味もあるのでしょう。
 しかし、一般視聴者の時と違って問題もグッと易しくなり、アイドル歌手でもバッシバッシと答えていく姿を見て、「あれは答えを教えているのでは」と疑問も当然沸いてきます。あるいは優勝したら本当に海外に行くのか、獲得した賞金のほかにギャラも貰っているのではなかろうか、などと、タレント大会へ疑問や不満を持たれる方も多いと思います。
 まず、答えを教えているのか、という疑問ですが、これを面と向かってスタッフに聞いても教えているわけがないと言われるに決まっていますが、ギョーカイの情報を総合してみると、フツーは教えてないそうです。ただし問題のレベルを下げてあることは否定しません。答えを教えると、教えた順序を間違えて次の問題の答えを言ってしまったり、ある漫才タレントは教えて貰ったのにできなかったりとかで、弊害のほうが多いのだそうです。そこで、「これらの中から出題しますよ」と、出題しない問題も含めたリストを前もって見せる番組があるそうです。これなら順番を間違えることはなく、ぼんやりと頭の中に問題の記憶が残り、問題を聞いた瞬間、アッあれだ、と自然な雰囲気で解答してくれるそうです。
 また、旅行もスケジュールの都合で行けないタレントが多いですが、行くと言ったら行けるそうです。賞金の他に当然ギャラは貰ってますので、できないタレントでも生活の心配はいりません。だからわかっていてもわざと間違えて笑いを取る場合もあるようです。
 要するにタレント大会はショーとして見ればいいのであって、勝敗にあまりこだわらないで見た方がいいでしょう。

自分で作っている?ブラックリスト

 何度もクイズ番組に出ているとブラックリストに載って、出場ができなくなる。こんな話が何年も前から、まことしやかにクイズマニアの間で流れています。本当にクイズマニアのブラックリストは存在するのでしょうか。川口浩探検隊に調べてもらいたいくらいです。
 クイズの予選に行くと必ずプロフィール表を書きます。早い話が身上調査表で、これには住所や職業はもちろん、趣味や過去のクイズ歴、自己PRなど、さまざまな項目を埋めるようになっています。これをもとに出場者を決定するので、書かないわけにはいきません。
 このプロフィール表に出場時の成績などもメモして保存しているものが、いわゆるブラックリストだとぼくは思うのです。だからブラックリストがあるとすれば、クイズマニアは自分で自分のを作っているわけ。1つの放送局でいくつものクイズをやっていますから、Aクイズの予選に出た人が同じ局のBクイズに出るとき、スタッフが局に保存してあるAクイズのプロフィール表を検索して、この人のプロフィール表を見つければ、この人の過去の成績も判るでしょう。また、制作プロダクションを通して、局の壁を越えてプロフィール表をやりとりすることも可能でしょう。
 局がクイズによく出る人をあまり出したくないのは、視聴者からの反感を避けるのが一つの理由です。必ずといっていいほど「なんであの人ばかり出すんですか。わたしはハガキを百枚も出したのに、予選も受けれないんですよ。あの人はこないだも○○クイズで優勝した人でしょう。あの人ばかりいい目にあって」というような抗議の電話があるんだそうです。また、公共の電波だから一般視聴者が半独占的に出るのはマズイという考えもあるようです。だからすでにクイズ番組に出ているなら、3ヵ月くらい間をあけないと出してもらえないこともあります。あるいはスタッフにも「あいつに賞金をやるのは気に入らない」という心理があっても不思議ではありません。
 理由はともかく、クイズマニアの中には目立つと出れなくなってしまうと思っている人が大勢いて、例えば週刊誌のクイズ特集で取材を依頼しても、忙しいからとか言って決して出ない人や、かのプロフィール表にウソを書く人もいます。
 でもどうしても心配なら、最初は簡単なクイズ番組(100万円・クイズハンターやTBSのヤマカンクイズシリーズなど)を狙ってください。簡単なクイズ番組ほどクイズマニアを嫌う傾向があるからです。逆に歴史の長いクイズ番組はクイズマニア歓迎の傾向がありますので、強くなってから出てもまず大丈夫です。
 しかし、クイズ番組で本当におもしろいのは、名人同士の白熱戦です。年に1度はクイズ日本一戦をしてもいいと思うのですが……。

あの手この手ウラテ

 どこの世界にもまっすぐ正面から道を歩むより、楽な裏道を捜すのを美徳とする人がいるものです。そこでこういう方法もありうる、というお話をしましょう。
 まず、何度予選申し込みハガキを出しても拾われないかわいそうな人は、直接予選会場に行ってしまうテがあります。これにはいつ、どこで、なんの予選があるのかを知らなければなりませんが、グループでクイズを楽しんでいれば情報は簡単に入ります。しかし、名簿が完備してあって該当者以外はいっさいダメという番組もありますので念のため。
 予選になんとか呼ばれた、となると次の目標は予選通過。でも予選に受かるには予選問題に7割以上答えなければならない……。そこでこれまた全国組織のグループが活躍します。例えば大阪で予選があって、翌週は東京で予選がある場合、大阪での予選問題をテープにこっそり録音して、東京の友人に送ってあげる……。でもスタッフ側も地区によって問題を変えるなどの手段を講じています。しかしこの方法をすると、実力もないのに予選に通ってしまうのですから、本番では強い人と対戦させられ、結局恥をかくハメになってしまいます。
 いざ本番となると、やっぱり頼りにしたいのは他人の力。例えば、クイズ天国と地獄のように単純に○と×でするクイズは、会場の客席からサインを送ってもらいます。会場には局が仕込んでいるバイトが「まるー」とか「ばつー」とか叫んでいますが、友人の声や身振りを頼りに○×のボタンを押すのです。三択クイズでも同様なブロックサイン戦術がとれますね。でも局もさるもの。番組が進行するにつれ、照明を暗くしてサインを見えなくしています。
 あるいは出場が決まって対戦相手を調べると、強豪と当たっている場合もあります。こういう時は「すみません。この日はどうしても都合が悪くてまたにしてくれますか……」と出場延期をするものテ。でもその強豪ごとシフトされる場合もあるのです。局は対戦相手の組み合わせも考えて人選しているのだから。
 こういうふうに書いてくると、クイズマニアばかりが悪さをしている印象を与えるので、局側の操作も推理しておきます。まず、特定の出場者を意識的に勝たせたり負かせたりするのはよくあり、例えばテレビ局にお知り合いがいるご婦人を勝たせたい場合、その人のプロフィール表に「猫が好き」とあれば、猫の問題を2〜3問出して優位にしてやれます。逆に負かせたい場合は不得意ジャンルをたくさん出せばいいのです。そのほか勝ち抜きチャンピオンを負かすために、わざわざ予選も受けていない強豪にストッパーとして出場を依頼する場合も。
 クイズマニアの中には、特定の人の早押しボタンにコンデンサー(抵抗器)を仕掛けて、ボタンの反応を遅らせることができると真剣に悩んでる人もいましたが、クイズに出れば出るほどテレビ界のウラを知ってしまい、こんな悩みが出るのもうなづけるのです。

ミスに、事件に、放送中止!?

 タレントや主要スタッフが不祥事を起こすと、すでに録画済の番組は大困りで急遽、番組を差し替えたり、断りのテロップを流して放送したりと、テレビ局はてんやわんやになります。そこでクイズマニアの中には、クイズの録画後、自分や司会者がよからぬことをして捕まったら、クイズ番組でも放送中止になるのか、とくだらないことを考えている者がいます。まー、人を殺した奴が賞金をガッポリ貰ってしまったら、あるいはニャンニャンした司会者がもっともらしく出場者にインタビューしてたら、視聴者から反感を買うでしょうねぇ。
 でも実際に、83年に連続殺人で捕まった京都市の消防士勝田清孝は、77年夏に朝日テレビのクイズ番組「夫婦でドンピシャ」の予選を受けたのち女性を殺し、その6日後に平然と夫婦で録画録りを済ませて8万円を獲得したという、世にもおぞましい事件がありました。また、83年4月には、2年前に五百万円を盗んで逃げた男が日本テレビの「エッ、うそーホント!?」で問題の解説役で出演。それが元で逮捕されたという、どこか間が抜けた事件もありました。これらは放送後に事件が発覚していますが、一億総タレントの時代、いつ視聴者参加番組で放送中止が出るかわかりませんね。
 それとは違いますが、クイズ番組は問題のミスがしばしばあってスタッフを悩ますようです。例えば、午前中の某クイズ番組は、初期に「鉄腕アトムを作った博士は」という問題の答えを「お茶の水博士」にしてしまったことがあります。正解は「天馬博士」で、この問題は、「鉄人28号を作った博士は」という問題同様に誤りやすい問題です。その後この番組ではスタッフに大学のクイズ研究会を入れたりして、出題ブレーンを強化しているようです。
 また、かつて某歴史的クイズ番組は、「世界で一番大きい大陸は」という問題に「ユーラシア大陸」と答えた者を間違いにしてしまいました。ユーラシア大陸はアジアとヨーロッパを含む世界一の大陸で、もちろん正解です。放送前にミスに気がついたからいいものの、結局このビデオテーブは破棄し、このときの出場者には後日改めて出場してもらいました。
 中でも82年2月14日のバレンタインデーは最悪で、「聖バレンタインはどこの国の人」という問題が、朝のクイズマガジン82(テレビ朝日・終了)と夜のアップダウンクイズにそれぞれ出ました。マガジン82は「イタリア」と答えた出場者を間違いとし「アイルランド」を正解としたのに、アップダウンは「アイルランド」と答えた出場者を不正解とし「イタリア」を正解としたのです。かの「三六五日事典」には「アイルランドの人」とあり、岩波などの人名事典には「古代ローマの人」とあって、日本キリスト教連合会に照会すると「イタリアの人です」とのこと。どうやら「三六五日事典」が間違いの元のようですが、解答が逆ならどっちも正解だったわけで、この日をクイズマニアは「聖バレンタインデーの逆殺」と呼んでいます。

番組見学で情報収集

 高木彬光の推理小説「誘拐」に、誘拐を計画している人間が事前に誘拐事件の裁判の傍聴をし、誘拐を勉強する恐ろしいシーンがあります。これを読んでぼくはハタとヒザを打つものがありました。つまりクイズ番組に出る前に、その番組を見学して雰囲気に慣れておけばより良いのではと。
 現在ほとんどの番組には観客がいて、拍手をしたり珍答に笑ったり、声援を送ったりしています。でも司会者が「楽しい番組です。皆さんも遊びに来てください」と言ったのを真に受けて、ふらっと局へ「遊びに」行っても、警備の都合でスタジオに入れてもらえません。なにしろチェッカーズを見に来たのか、クイズを見に来たのかわかんないもんね。
 実はこの観客の多くは「仕込み」とか「手ばたき」と呼ばれるアルバイトの学生やおばさんたちで、専門の派遣会社まであるのです。残りのごくわずかが本当の意味での観客、出場者の付き添いです。だから見学したいのなら、出場者に付いて行くことです。観客はアシスタントディレクターから拍手の練習をさせられます。一度すると必ず「拍手が小さい」と再び拍手をやらされます。でもこれは多重録音をして人数が多いようにしているだけのことです。
 そして出場前にその番組を見学してみると、スタジオの雰囲気や進行の方法がわかるから、自分の本番ではそれほどあがらなくて済むかもしれません。
 見学の利点はほかにもあります。出題したのに誰も答えなかったスルーの問題を、放送ではカットして次の回に再び出題することがよくあるのですが、見学していればバッチリ答えられます。クイズマニアはカット問題までマークしているのです。
 ウルトラクイズでは、実際に出題された問題より放送される問題のほうがはるかに少ないのですが(ウルトラクイズの問題集でも、機内クイズ以外は放送された問題しか載ってない)、あるときクイズに答えながらも問題を一生懸命メモしている出場者がいて、怒られたとか。クイズマニアの問題への執念は恐ろしいのだ。

問題作りはチェックがたいへん

 普通、30分の知識クイズ番組で出題される問題数は約40問ですが、スタッフは40問だけ作っているわけでなく、この何倍もの問題を作っては、その多くをボツにしています。問題はやたらと難しいものを作ればいいのではなく、誰にでも答えられるもの、ちょっと難しいもの、これができれば感心されるもの、年配向け、ヤング向け、男性向け、女性向けと、さまざまなジャンル、難易度を必要とします。どの解答者もある程度の点を獲得し、しかも視聴者からは、「さすがテレビに出る人たちは違うなー」と思われるようにしなければなりませんので、なかなか大変です。
 一般に問題を作成するのは専門の放送作家の他に、外部スタッフとして学生、主婦、サラリーマン、医者、教師などさまざまな職業の人が行っています。彼等は一般の新聞や雑誌はもとより、専門の雑誌や官庁の広報誌、独自に見聞したことなどをもとに、何百問というクイズ問題を作ってきます。それらを、一つの方向にかたよることのないよう注意を払って、また、出場者の予選問題のできにより、得手不得手まで分析したうえ、出題順や問題文のテニヲハまで含めて検討した結果、残った数十問が出題されているのです。「構成」という肩書でテロップが流れる人がこれら一連の作業をするスタッフです。
 さて、クイズ問題を作る上で一番難しいのは、作った問題とその答えが、本当に正しいのかウラを取る作業です。クイズ番組には問題のチェックを専門にするチェックマンがいて、問題と答えが正しいかどうか調べます。いかにチェックが難しいかを示す有名な例題に「日本で一番長い川は」という問題があります。なんだ、そんなデータなら小学校の教科書にも載ってるよ、と思われるでしょうが、それがクセモノ。川の長さは年によって変わっていくのです。つまり、川はクネクネと蛇行してますね。蛇行が激しくなって陸地を浸食するとそのぶん川は長くなるし、さらに浸食して三日月湖を形成してしまうと、逆に川は短くなってしまいます。だから川の長さは常に変わっているのです。単純に手元の事典を見て信濃川だとか、石狩川だとか答えを決めつけてしまうのは危険なわけです。
 チェックの結果、出典が曖昧だったり、説がいろいろあって答えが幾つも出てしまうような問題は、どんなにおもしろい問題でもボツにします。また、方言もある程度は調査しますが、普通は一般に用いられている言葉を正解としますので、たとえ方言では正しくても間違いにされる場合もあるので、地方からの出場者はご注意を。
 また、はやりの内外の珍しい話題を素材にした番組では、海外にも情報提供者をおいて話題集めているそうですが、同じ話題にいくつかの局が、はち合わせすることもあるそうで、そうなったらせっかく高いお金をかけて取材してもボツにすることがあるそうです。

ニューメディアのクイズ

 ブラウン管のなかで行われるクイズといっても、テレビ番組だけとは限りません。ニューメディアを利用したクイズも、だんだん出始めてきています。
 まず東京・大阪で実用化され、今後全国に普及する予定のキャプテンシステムには、数ある情報のなかにクイズもあります。キャプテンのクイズは大抵三択クイズで、正解のキーを押せば次の問題画面に変わり、不正解ならもう一度となります。キャプテンの情報を受ける端末装置は発売されてはいますが、値段が高いし、主たる情報のニュースや天気予報、買物情報などのソフトがまだまだ充実していないので、当面、メーカーのショールームやホテルのロビーなどのデモを利用して楽しむといいでしょう。
 また、街のゲームセンターにも「頭の体操」や「ウルトラクイズ」といったコンピュータゲームがあり、他のゲーム機同様コインを入れて遊べます。これもキャプテンと同じく三択クイズがほとんどですが、ウルトラクイズのはコンピュータとジャンケンをするなど、番組を模してるのがウリモノです。「頭の体操」をやってみたら、かなりの問題に記憶がありましたので、問題自体はどこかのクイズ問題集からいただいたもののようです。この「頭の体操」は次々に正解していくと機械から「認定証」が発行され、成績の良かった人を集めてハワイ旅行をかけた大会を開いたほどです。
 最近は家庭にもコンピュータが普及してますが、パソコンソフトのなかの「ロールプレイングゲーム」や「アドベンチャーゲーム」と呼ばれるものは、一種のクイズ・パズルのようなものです。宝物や殺人事件の犯人を捜したり、お姫様を助けに悪魔の棲む国へ冒険の旅に出るといた物語をコンピュータと対話しながら解いていくもので、例えば金庫を開ける鍵が木に引っ掛かっている。それを取るのにハシゴを捜す。ハシゴが無いのでロープを木に掛ける。金庫の中からは呪文を書いた紙が出てくる。この呪文は何に使うのか……と、物語を解決していくのにクイズのようなヒラメキがいるのです。

TVクイズのボードゲーム

 大きな盤の上の駒を進めることによって勝敗を競うゲームを、ボードゲームといいます。おもちゃ屋さんでご覧になったことがあるでしょう。昔、ダイヤモンドゲームとか、人生ゲームをした方もいらっしゃるはずです。このボードゲームは、各玩具メーカーからさまざまな工夫を凝らしたものがたくさん出ていますが、テレビの人気クイズ番組をボードゲームにしたものもありますので紹介しましょう(ものによっては絶版・売り切れのもあります)。
 まず、「アメリカ横断ウルトラクイズゲーム」があります。○×クイズや三択クイズのカードを使い、このカードから出題したクイズの正否によって駒を進めるものです。球場からグァム、ハワイを経てニューヨークまで、それぞれ異なったゲームを楽しめるようになっており、罰ゲームもある本格的?なものです。デパートでこのゲームの箱を見つけたとき、ひやかしで箱を開けてみたら、ボート上にカット的に使われているウルトラクイズの写真にぼくが写っていました。そこでおもわず買ってしまったいわくつきのゲームで、一度友達を集めてやってみましたが、早押しクイズがないのでいまひとつ盛り上がりに欠けました。
 そのほか「なるほど!ザ・ワールド」のボードゲームもあり、こちらも問題カードを使うもの。「クイズ面白ゼミナール」はマイコン利用でカセットを変えることによって、算数・理科・社会の問題を選べ、得点がデジタルで表示されます。また、「アップダウンクイズ」のは解答者の駒を乗せて上下する本物顔負けのプラスティック製のゴンドラがついていますし、「世界一周・双六ゲーム」は、番組でおなじみの世界地図がそのままボートになっています。
 さて、クイズの本場アメリカには、クイズのボードゲームにも大ヒット商品があります。カナダと合わせ2200万台も売れた「トリビアル・パスート」がそれで、ジャンル別6000問のクイズが載っている問題カードと、サイコロと駒とボードで遊ぶもの。日本語版も「トリビア」という商品名で、ハーレクインエンタープライズから発売されています。ルールが単純なだけに、やっているうちに興奮してくるスグレモノです。
 日本語版「トリビア」は、各大学にトリビア研究会を設けたり、勝ち方の本を出版したりする計画があるようですから、今後ブームになる可能性が大いにあります。

誰でもあがるクイズ出場

 「テレビに出てあがりませんか」とよく人から聞かれますが、もちろん何度出てもあがったり緊張してしまいます。そこでクイズ出場に際して体調がどう変わるかをクイズマニアに聞いてみました。
 別になんともないという図太いやつもいることにはいますが、「おなかの具合がおかしくなる」人が多いようです。早い話が下痢で出場日の朝、下痢どめの薬をのむ人もいます。
「胃が痛む」人もいます。神経性胃炎ならぬ「クイズ性胃炎」でしょうか。また、「食事が喉を通らない」人も多く、テレビ局から仕出し弁当を貰っても、ハシもつけられない人もいます。総じて、胃腸をやられる人が多いようです。
 また、出場前日は興奮と緊張のあまり「眠れない」人も多く、睡眠薬やお酒、精神安定剤のお世話になる人もいます。あるいは「身体がだるい」人や「頭痛がする」人もいて、どうやらベストコンディションで臨んでいる人はいそうにありません。
 テレビを見ていてもボッとしている人や、極端に緊張している人もいて、かわいそうになります。そういえば、かつてアップダウンクイズで間違えてゴンドラが下がった瞬間、緊張のあまり気を失ったご婦人がいたと聞きました。
 ぼくは下痢組ですが、録画途中の弁当などは「食わないやつは負ける」とブツブツ言いながら、周りを牽制しながら食べます。でも本当は食べたいとは思いません。いざ、出場となると今度は心臓がドキドキしてきます。解答席に座り、スタッフから最後の説明を受けているときなど、自分の心臓の音が聞こえるくらいです。
 しかし、実際に録画が開始されたら、あとはあせってもしかたありません。自分のペースで進めるだけです。それに多少の緊張感があったほうが、かえってスピードについていけるようです。
 初心者があがるのは未知への恐怖からでしょうが、ベテランは、なまじ知っているからこそ恐怖心があるようです。

クイズ神社

 クイズの勉強はうまくいかない、でもやっぱり勝ちたい−−−。こういう人は神仏にすがるのが世のなりゆきです。以前、ウルトラクイズに身体中にお守りをぶら下げ、成田のジャンケンを突破した学生がいましたが、受験の太宰府天満宮のような、クイズ出場者のためのありがたい神社はないものでしょうか。
 ところが、あるときロードマップを見ていると、埼玉県越谷市にその名もズバリ「久伊豆神社(越谷市越ヶ谷一七〇〇)」があるのを発見。そこで早速行ってきました。場所は東武鉄道越谷駅からクルマで10分のところにあり、鬱蒼と生い茂る樹木を目当てにグルグル廻ってやっと見つけました。
 敷地は広くも狭くもなく、長い参道の脇にはかわいらしい花が咲いていて、季節ごとに折々の花が楽しめるそうです。お宮の横ではお札やお守りを売っていますから、ここでお参りして、お守りを身につけて出場したら優勝は間違いなし……。
 とは、いささか虫がよすぎる話。この久伊豆神社、宮司さんに逢ってお話を伺うと、正しくは「ひさいず神社」と発音し、出雲の神様を祭ってあるとか。本当は除災招福の神様で、クイズの神様でも学問の神様でもありません。「ひさいず」の由来はいま一つはっきりしないそうです。なにしろご年配の宮司さんはTVクイズなどまったく縁のなさそうな方で、クイズの話をしても最初はトンと要領を得なかったのでした。
 さて、この久伊豆神社の効力ですが、いままでクイズタイムショックなどに久伊豆神社のお札を持って登場した人がいましたが、皆さん成績は奮いませんでした。この神社、どうやら本当にクイズとは無縁?のようです。もっとも御利益に「クイズ必勝」なんて謳っても、需要が少ないから、神社の儲けにはならないでしょう。
 話変わって85年2月の週刊誌に、ある主婦が、自分がファンのクイズ有名人の名前を書いた紙片をお守りがわりにバッグに入れ、予選に臨んだ旨の記事がありました。こちらも効なく落ちたそうです。やっぱりクイズに神仏祈願は通用しないようです。

おかしな賞品

 クイズで出る賞品に、CMの替わりに商品そのものを番組に提供する、パブリシティ(広告の形をとってない実質的な広告)賞品があります。俗に景品屋と呼ばれるパブリシティの専門会社もあり、多くの番組はそのような会社と提携して賞品を仕入れています。だから中にはおかしな賞品や、少しは気をつかえばいいのにと思う賞品もあります。
 よくラーメン、トイレットペーパー、ティッシュ、エンジンオイル、シャンプー、醤油などなど1年分差し上げますという賞品がありますね。1年分の基準がなにかよくわかりませんが、いずれにしろ段ボール梱包でドーンとくるので保管場所もなく、知人に配るハメになります。ま、こういうのは愛嬌があっていいでしょう。
 でも、養毛剤や白髪染めなどのちょっとマイナーな品は、貰う人にもよってはかえってイヤミになることも。
 一番おかしかったのはUHFのクイズ番組で出た赤ちゃんのオマル。オマルを必要とする人なんて世の中に極めて少ないし、主婦向けのクイズ番組ならともかくヤング主体の番組だったので、ますます失笑をかってました。オマルメーカーとしては安い費用でCMの替わりとしたかったのでしょうけど……。


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