廃線前を訪ねて


かつて北海道の大地を駆け巡っていた、今は廃線となった国鉄ローカル線のありし日の姿。

©北川宣浩 2000
天北線

 

廃線前を訪ねて

渚滑線


線名:渚滑線(しょこつ・せん)
区間:渚滑(しょこつ)-北見滝ノ上(きたみたきのうえ) 34.3Km
全駅:渚滑-(元西)-下渚滑-(十六号線)-中渚滑-(上東)-上渚滑-(奥東)-滝ノ下-(雄鎮内)-濁川-北見滝ノ上
(  )の駅は、仮乗降場。
開業:1923年11月05日 渚滑-北見滝ノ上
全通:1923年11月05日
廃止:1985年04月01日
訪問:1981年05月02日

渚滑駅 渚滑駅入場券
上渚滑駅 滝ノ下駅

渚滑(しょこつ)線は名寄本線の渚滑駅から内陸部へと分岐する行き止まりの盲腸線で、その沿線はヨーロッパの牧歌的風景が続く、大変美しい車窓が楽しめるローカル線だった。
ゴールデンウィークのさなか、北見滝ノ上駅に降り立つと、下校の女子中学生たちが寄ってきた。「クイズ王の北川さんではありませんか?」。そう、当時の私はアメリカ横断ウルトラクイズをはじめとして、クイズ番組に軒並み優勝していた「有名人」だったのだ。その顔が、最果ての北見滝ノ上まで知れ渡っていたとは感激だった。たちまち取り囲まれ、サインをねだられた。同行の札幌市のY君によれば、このあたりは夜は真っ暗で何も遊ぶところがないから、テレビのセットインユース(視聴度合い)が高いそうだ。
美しい沿線と、汚れ無き女子中学生のいる、渚滑線だった。
筆者の渚滑線体験は、このときの往復1回のみで終わってしまった。秋の木々が色づく頃、冬の真っ白な光景……さぞ美しかっただろうと悔やまれる。

北見滝ノ上駅スタンプ 北見滝ノ上駅
北見滝ノ上駅
北見滝ノ上入場券

このコンテンツをご覧になった紋別市渚滑町のMさんから、往時を紹介する次のメールをいただいた。お許しを得て掲載するが、鉄道で賑わった町が目に浮かぶようで、「今は昔」である。
北見滝ノ上駅は往時の姿のまま現存しているという(2004/08)。

渚滑駅は、名寄本線と渚滑線との分岐点ということもあって、街の規模(最盛期で人口3,000人程度)にしては駅の施設が大きく、ありとあらゆるものがありました。
駅舎の他に、機関区の休憩所、保線区の事務所、電気支区と建築部?の建物、機関車を点検・修理する建物、職員の浴場、職員と家族専用の浴場(街には銭湯がないのに)等、あげたらきりがありません。もちろん職員も多かったので官舎も街のあちこちにありました。その他に機関車のターンテーブルやそこから放射状にのびた何本もの線路(機関車が待機する場所と思われるが、機関車が止まっているのは見たことがない)。でも冬期間しか使わないラッセル車がいつも置いてありました。そしてきわめつけは国鉄職員専用の野球グラウンド(街の人は鉄道グランドと呼んでいた)までありました。
私の育った家は、そんな渚滑駅のすぐ近くにあったので、幼い頃から、駅構内が毎日の遊び場で、よく友達と線路で遊んでいて駅員に怒鳴られたものでした。一度ターンテーブルのスイッチをいたずらで入れて、テーブルが回り出し、止める方法が判らなくて、そのまま逃げ帰って来たこともありました。今では懐かしい思い出です。

 

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