アメリカ横断ウルトラクイズ
クイズ王の本

歴代クイズ王が語るウルトラクイズ必勝法
「知力・体力・時の運」次のクイズ王はあなた!かも、しれない?

クイズ王の会/篇
©北川宣浩・森田敬和 1987
ハワイ

情熱は太平洋を越えて………第2回/北川宣浩(3)

帰れない旅

 9月11日月曜日、サイパンのコンチネンタルホテル前の砂浜では、○×クイズが始まろうとしています。並んでじっと立っていると、みるみる肌は赤くなっていきます。本来なら現場で働いているはずなのに、クイズをしている……。暑さと緊張、そしてほんの少しの後ろめたさと、あとには引けない怖さが入り交じって、許されるなら倒れたいくらいでした。

 ○×クイズの3問目「サメにエラはない」で僕は×をあげました。しかし正解は○。一瞬信じられませんでした。もう負けてしまったのです。明日からバイトしなきゃ。そんなことが頭をかすめます。親にも申し訳なく思いました。でも幸運にも不正解者があまりにも多かったため、敗者復活戦になったのです。

 敗者復活戦はサイパン国際空港の前での数字カルタ取りクイズ。問題がすべて数字で答えられるようになっており、その数字のカルタを取れば勝ち進める形式です。

 問題「ハワイの頭文字はHですが、Hはアルファベット何番目の文字?」
僕は飛びました。中学のクラスがG組まであって7組でしたので、Hは8。そんな連想から即座に答えを導き出し、8のカルタめざして飛んだのです。

 正解!。よかった。本当によかった。僕は負けられないのです。自分のわがままを通してここまで来たのだから負けられない、そう思いました。僕は帰れない旅に出ているのでした。
その後、ハワイ、サンフランシスコ、レイクタホ、リノ、デンバー、シカゴ、ナイアガラと、ほとんどトップで勝ち進んで行きました。

土壇場の危機

 勝ち残った4人は、ニューヨークの1つ前ボストンで、熱気球に乗ってする「バルーン・ダウン・アップ・クイズ」を行いました。

 しかしこともあろうに、一問目を間違えたのは僕だけでした。みんなのバルーンは少し下がって地面に近づきましたが、僕のバルーンだけ上がってしまいました。もし間違え続ければ、そのままどこかへ飛んでいく趣向なのです。せっかく今まで順調に勝ってきたのにニューヨークを目前にして敗れるなんて……。今まで、なんのために勝ってきたのだろう。最後の最後まで来たところで負けて、一番みじめな思いをするために、ここまで来たような気がしました。 しかし、まだ諦められません。次からは全部正解してやれ。逆境になれば僕は燃えます。めったに出さない根性を出しました。気合を入れました。

ボストンバルーンダウンアップクイズ

 まず、お姉さんの間下由美子さんが通過しました。気球から降りた彼女が、福留さんのインタビューに大喜びで答えているのが上から見えます。ニューヨークに行けるのはあと一人です。あと1問で合格する内田君が奇跡的に間違えてくれて、僕と並びました。俺はハンパな気持ちでクイズをしているのじゃない。最後まで絶対に負けられない。そう強く思いました。

 僕と内田君はその後の問題には正解を出し続け、そして「問題、メリケン粉とうどん粉はまったく同じである」
僕は○、内田君は×、正解は○。
気球の上で大声で叫びました。
「ニューヨーク、ニューヨーク!」
ついに、ニューヨークまで足を運べることになったのです。

 

公共の宿

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