TVクイズ大研究

TVのクイズ番組を裸にした本!
数々の番組で優勝を続ける筆者が、自らの経験と頭脳からあみ出した、本当は公開したくない、
TVクイズ攻略のまる秘カリキュラム一挙公開!

©北川宣浩 1981
ウルトラクイズ

第7章 特別番組 アメリカ横断ウルトラクイズ


スタッフサイドの話を聞いてみたら


 担当の佐藤孝吉プロデューサーによると、単なるクイズ番組ではなく、ヒューマンドキュメンタリーを狙っているとのこと。普通のクイズ番組は、出場者は単調なアンサーマシンにすぎないけれど、ウルトラクイズでは見事に「人間」として描かれていた。むしろクイズというものを使って、人間の内面を引き出していると考えてもいいだろう。

 ウルトラクイズをマネた番組がいくつかあるが、それらは単に表面的な、奇抜さや残酷さ、ドタバタなどをマネたにすぎず、真のテーマに触れてはいない。それゆえ見せかけだけの軽薄なものになっている。その点ウルトラクイズはホットで人間味あふれる素晴らしい番組で、参加できて本当によかった。

 さてTVでは、挑戦者がたいへんなのはわかるが、現実にはスタッフのほうがもっとたいへんである。あのロケーションの煩雑さを知っていれば、ゴロ寝をしてTVを見るなど、無礼でできない。USTSニュース誌などより、苦労話をさぐってみる。

 ロケ地は周辺状況、方角、交通の便、ホテルからの距離、電源の有無、雨天時の避難場所などすべてを調べたうえで決定する。PANAMビル隣の、エンパイヤステートビルからのラジオ電波が障害となり苦労したとか。目に見えないものまでチェックする必要があるのだ。

 ロケ地は国立公園や名所、遊園地が多いが、一般観光客に対する保険など、細かい配慮を条件のもとに撮影許可がおりるので、ナイアガラでは三千五百ドル、グランドキャニオンでは七千ドルの保証金が必要だった。

 スペシャルゲストはギネスブックなどから選ぶが、折からのギネスブームで、他局と取り合いになる始末。一方、目でビールびんの栓を抜く男は、出演交渉したが、彼の上司の許可がおりずボツになったそうだ。やっと獲得したゲストも本番まで挑戦者の目に触れないようにしなければならない。会場の準備ができるまで、ぼくらはさんざん待たされた。そして会場に入っても、場面変わりでは目かくしをさせられた。

 勝ち抜き制のため、敗者が決まるまで問題を出し続けなくてはならない。ナイアガラでは決定するまでに100問以上も使ってしまい、用意してある問題数で足りるかと、スタッフは胃が痛くなったそうだ。放送ではかなりの部分をカットし、編集してある。トントン拍子で進んでいるように見えるが、実は膨大な時間がかかっている。

 収録の合間には、各チェックポイントに合わせて用意してある問題を、組み直したり、持参したガイドブックや広辞苑から現場で問題を作るなど、寝るヒマもない。クイズの方法も、日本や現地で実験の上、実施している。

 クイズに使う小道具や撮影機材、私物等を含めて100個以上の荷物がある。入国時に税関のチェックを受けるだけでもたいへん!。その後もクイズ会場−→ホテル−→空港−→飛行機−→次の空港−→ホテル……と、移動の繰り返しのため破損も多い。あのウルトラハットは予備を用意してあった。

 また、誰が先へ行くか誰が帰国するか全くわからないのだから、並の旅行業務ではない。成田で渡航者が決まると、ツアーコンダクターは50名分のチケットに名前を記入。全員ニューヨークまでにしてある。現地で勝敗が決まれば、敗者を日本へ帰すチケットに名前などを記入し、再発行。現地から先の"余ってしまった"航空券は引換券にして払い戻し。ホテルの部屋は架空の名でとってあるからそれを変更するなど、煩雑を極める。

 TVを見ると楽しい旅行に見えても、実際は挑戦者もスタッフもたいへんな苦労があるのだ。

 ぼくは、このクイズに参加して、TVの見方が変わった。制作スタッフの名まで見るようになったし、この番組はどういう意図で作ったのだろうか、どういう方法で撮ったのだろうかといったことも考えながら見るようになった。そして、どんな困難な場合にも、常に前進しようとするアメリカンスピリット=ウルトラクイズスピリットをいつも持っていようと思った

 さ、TVの前にゴロンと横になっている人は起きあがり、起きあがったらハガキを書いてポストへ行きましょう。TVクイズの本当の楽しみは見ることではなく挑戦することなんですよ。できるとかできないとかは関係ないんたから! チャレンジするハートを、いつまでも大事にしようよ。その時に、あなたは確実に存在しているんです。

 

 

公共の宿

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