アメリカ横断ウルトラクイズ
クイズ王の本

歴代クイズ王が語るウルトラクイズ必勝法
「知力・体力・時の運」次のクイズ王はあなた!かも、しれない?

クイズ王の会/篇
©北川宣浩・森田敬和 1987
ナイアガラの滝

決闘、リバティ島……………第10回/森田敬和(4)

クイズ人生最大の仇敵と

 10月4日、いよいよ決勝戦です。勝っても負けてもこれが最後のクイズです。とにかく、自分のすべてを出し切って、悔いのないように戦おう。それだけを思ってクイズ会場の自由の女神があるリバティ島へ行きました。そこで待っていたのは予想通り西澤君でした。今まで僕の戦った中で最強の男です。必死にボタンを押しました。必死に答えました。何度もピンチに追い込まれました。シーソーゲームの末、やっとの思いで勝利を手につかんだのです。

 後で知ったのですが、ちょうどこの日、僕がクイズを始めるきっかけとなった祖父が亡くなりました。この旅行中「敬和はどうしている」と母に何度も尋ねていたようで、僕が勝ち進んでいるのを本当に楽しみにしていたようです。きっと僕がニューヨークで追い詰められた時、日本から飛んできてくれて僕に最後の力を与えてくれたのでしょう。おじいちゃん、僕はあなたの力でようやく日本一のクイズ王になれました。ただテレビで見てもらえなかったのが残念です。この闘いで僕のクイズに賭けた青春は全て燃え尽きました。全てが終わったそんな気持ちでした。ウルトラクイズの放送が終わると何百通という手紙をいただきました。「また出てください、ぜひ二連覇をめざして欲しい」とか「森田さんの頑張っているところを見て私も頑張って勉強しようと思った。またテレビに出て欲しい」と言った内容の物が非常に多くありました。もう二度と優勝はできないかもしれません。けれどお便りを読んで参加だけは毎年できる限りしよう、そう思うようになりました。みなさんと一緒にウルトラクイズを楽しみたい、今はそんな気持ちで一杯です。

 賞品のとても素敵な熱気球をいただきました。でも日本で乗るにはライセンスがいるようなので、まだ乗ることはできません。しかしいつの日かでっかいウルトラクイズのマークがついた僕の熱気球で世界一周、(Around the World)。そして虹の彼方へ(Over the Rainbow)、飛んで行きたいと思っています。

星に願いを

 何の汚れも知らない1人の少年がいました。少年は星を眺めるのが大好きでした。夜空に光輝く星の群れは少年の心をいつもいつもときめかせてくれました。少年は星に願いをかけました。「お星様、どうか僕をあなたの仲間にしてください」その時です、夜空の中でも一番輝いている星がおもいっきりトゥインクルしたのです。

 とっても長い時間が流れました。少年は大人になりました。世の中の汚れやずるさをいっぱい知りました。挫折もいっぱい味わいました。かつて少年だった大人は自分の中からだんだんと純粋なものが失われていくのに気付きました。「これではいけない」かつての少年は自分の中にまだ少年の部分が残っているうちになにかをやってみよう、そう思ったのです。

 かつての少年は自分の夢をアメリカに、そしてクイズに賭けることにしました。そうです、ウルトラクイズに挑戦したのです。1ヵ月の冒険旅行は大人を少年に戻してくれました。純粋な気持ちが甦ってきたのです。全力を尽くして戦った少年に、自由の女神はやさしく微笑んでくれました。少年は勝ったのです。その時少年は自分が輝いているのに気が付いたのです。

 遠い昔に星に願いをかけた通り、星の仲間になることができたのです。夜空でも一番輝いて星、それが今の少年でした。

 1年がたちました。ふと少年がとなりを見てみると自分よりもっと輝いている新しい星がありました。その新しい星を少年や他の星たちもやさしく仲間に迎え入れました。その新しい星はあなたです。今年こそテレビの前でウルトラクイズを見ているのではなく、参加してください。勝っても負けてもそこに新しい何かがあるに違いないのですから。ではみなさん、後楽園球場でお逢いしましょう。

 

 

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