アメリカ横断ウルトラクイズ
クイズ王の本

歴代クイズ王が語るウルトラクイズ必勝法
「知力・体力・時の運」次のクイズ王はあなた!かも、しれない?

クイズ王の会/篇
©北川宣浩・森田敬和 1987
アーチーズ国立公園

勝つと誓って出たクイズ………第5回/真木法男(3)

最後抜けの苦戦

 そこからピラミッドでおなじみの、ティオティワカン遺跡へ行きました。10人並んでの早押しクイズで、お手付きをすると100m後ろにあるピラミッドまで走っていって、お祈りを捧げて戻ってくる、たいへんなルールです。ここまで来ている10人の中には、強敵の道蔦君、落合君、杉山さんがいます。彼らに先に抜けてもらって、そのあとからさっそうと抜けようと、かっこいいことを考えていたのが運のつき。強敵の3人はもちろん、他の人も次から次へ抜けていくのに、僕はまだ、1問も答えられないありさまなのです。問題に手を出せないばかりか、人の答えを聞いてもピンとこない。数人になって「納豆を作るのに使うのは何菌?」という問題にようやくボタンを押しました。それで答えたのが「酵母菌」。正解は納豆菌でブー。炎天下、遠くのピラミッドまでお祈りを捧げに行ってきました。でも、僕は茨城育ちで毎日納豆を食べていたのに、なんてことでしょう。それ以来、納豆はすっかりキライになりました。

 そして、とうとう塩沢保子さんと、最後の2人になってしまったのです。そこでもまたお手付き。シャリアピンステーキと答えなくてはならないのに、のどの渇きで舌がまわらず、シャンピニオン……と口走ってしまいました。それで、またもピラミッド詣でです。もうアカンナァ、僕がお祈りしているうちに塩沢さんが答えて抜けてしまう。ガックリしていたところ、今度は塩沢さんが間違えたのか、ピラミッドに向かって走り始めたのです。

 これはチャンスです。ヘトヘトになって解答席に戻り、塩沢さんが祈りを捧げている間、僕だけに問題がでました。そしてどうにかこうにか3問答えて、やっとのことでティオティワカンを抜けれました。

 再びアメリカへ戻って、フェニックスの砂漠でおなじみバラマキクイズが行われました。落下傘からバラまかれる問題封筒を拾ってきて答える形式です。しかし、ティオティワカンショックが抜けないのか、ここでも人の問題を聞いてもわからない、そして自分の問題も当然わからないという悲惨な戦況になってしまいました。後で調べたらバイオリズムが最悪だったみたいです。拾ってきた問題にはことごとく不正解。しかもハズレも引いてしまって、ここでもまた、みんなが次々と抜けていく中、僕と内田美雪さんの2人になってしまいました。

 2人だけの対戦なのにまたもハズレを引いてしまって、なんてついてないんだと、自分が情け無くなりました。今度僕が問題を拾いに行ってる時、内田さんが正解してしまうと、もう終わりです。そして内田さんにこんな問題が出たのです。「青森県で栽培されている、直径が約15cmにもなるリンゴの名前は?」(答え、世界一)
内田さんは小さな声で「富士」と言ったらしいんですが、すぐ福留さんの「世界一と言うんだ」と、答えを言う声が聞こえました。それが砂漠を走っている僕には、福留さんが「正解〜」と言ってるように聞こえてしまったんです。「せかいいち〜」と「せいかい〜」って、似てるでしょう。遠くであせっている僕が聞き間違えるのはしょうがないですよね。

 それで、もう僕の運命もここまでと、ガックリしたところ、不思議なことに内田さんがまた走りだしたんです。なんだかわからないけど命拾いしたと思い、次の問題封筒を福留さんに差し出しました。それにようやく正解して、やっとフェニックスを通過。ヘナヘナと座り込んでしまいました。そしたらサボテンのとげを刺してしまって、手にケガをするオマケつき。本当に、フェニックスにはまいりました。

 内田さんに科せられた罰ゲームは、飛行機から落下傘で飛び下りるものでした。懸命に着地の練習をする内田さん。高い台から飛び降りの練習をする内田さん。もともとチャーミングな彼女の表情が、輝くように美しくなっていくのが、画面を通じてもよくわかるのです。それにあの根性。これだったら、旅行中もっと声をかけておくんだったと後悔したものです。

 あの落下傘の罰ゲーム、「本当にやったのか?」と人からよく聞かれるのですが、そんな危険なことを素人にいきなりさせるわけはありません。あの罰ゲームは、ひたむきにチャレンジしていく姿がテーマで、するしないは二の次なんです。飛行機から彼女が飛び下りようとした瞬間、スタッフが「ここまで」と言っておしまい。で、彼女は飛び下りてないんですが、でも彼女は本当に飛び下りる気でいたそうです。僕が実際この罰ゲームをするとなったら、どうなっていたことやら。飛行機にしがみついたり、これまた想像を絶するみっともない結果になっていたでしょう。

 さらに、次のエルパソではついていないの上塗りで虫歯になってしまい、どうしてこうまでドジを踏むんだと、最初の妄想はどこへ行ったのか、旅の前半はガックリのしどおしでした。

 

 

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